疎■水■■が流れる城下の街並みを抜けると、一面に田んぼが広がります。加治川堤の桜に青葉が繁り、五十公野(いじみの)の花菖蒲も終わり、下越の穀倉地帯はすっかり青田に染まります。夏の朝霧に包まれた青田の真ん中を走るのは気分爽快。「今日も暑くなりそう」…取材する料理は冷やし汁です。田んぼの草取りをした後のごちそうです。 「冷■■汁■■の筵■■■引きずる木陰かな」。文政3(1820)年、小林一茶が数え年58歳の夏に信州柏原で詠んだ句です。涼しい木陰で冷汁をすする様子が目に浮かぶようです。クーラーや冷蔵庫もない時代のこと。採れたての夏野菜と擦ったみそを椀に入れ、冷たい井戸水や清水で作る冷やし汁は、暑い日には欠かせない食べ物連載連載12347下越の穀倉地帯、新発田の夕暮れ著者 服部 一景さん1人分58kcal 塩分3.3g調理時間10分⊕※レシピは食べやすいように調整しています本に関するお問い合わせは〈開港舎〉へ。材料 (2人分)きゅうり…1本青じそ…4枚わかめ(乾燥)…1〜2gみそ…大さじ2¹⁄2だし汁…4カップ白いりごま…少々作り方だし汁は冷やしておく(時間外)。わかめは水で戻して水気をきる。きゅうりは薄い輪切りに、青じそはせん切りにする。みそをすり鉢に入れてすりこぎですり、1を少量ずつ加えながら混ぜる。器に2を均等に入れ、3を注ぎ、白いりごまをふる。だったに違いありません。 他県でも出会いました。きゅうりと青じそのほかに群馬県桐生ではみょうがとみそにしょうゆを足した「冷や汁」、静岡県御前崎では獲れたての鰹■■■をたたいて梅干しを加え、みそに氷を入れてかきまわした「がわ」と呼ぶ船上の漁師料理、宮崎県の郷土料理「冷や汁」はいりこ(煮干し)、豆腐、なすを加えたかけ汁など、全国に広まりました。さいの目に切った夏野菜や果実を井戸水に浮かべた「水の物」も人気だったようです。 〈服部さん■ 新潟県新発田市にあるCGCグループのお店ですふるさとの風土と季節に育まれた料理や食材を紹介する『おかずの本』は、自称“おかずの旅人”こと、服■■部■■一■■景■■さんが全都道府県での発行を目指し刊行しています。日本の“ふるさとの味”を次世代に伝え続けていくことはCGCグループの願いです。今月は、2010年に刊行した『しばたのおかず』からご紹介します。今月ご紹介するのはのおかず新潟県新■発■田■市■「きゅうりの冷やし汁」です
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